KWサスペンションのこと シリーズ編 「トラックパフォーマンスを説明する前に」

これまでの内容で、「ストリートパフォーマンス」までのシリーズについては、ほぼご説明を終えたかと思います。
ここからは、KWが急成長するきっかけとなった、モータースポーツを楽しむ方向けのカテゴリーをご紹介します。その前に、少し「減衰力」についてお話ししておきたいと思います。

KW/STシリーズで減衰力調整機能のあるモデルをご購入いただいたユーザーの皆さまにとっても、興味深い内容になるのではないでしょうか。
ブログでもたびたび触れていますが、KW/STの調整機能付きモデルには、必ず「KW推奨値」が設定されています。取扱説明書にその数値が記載されていますので、まずはそちらをご確認ください。不明な場合は、KW JAPANまでお気軽にお問い合わせください。

減衰力の基準と変化について

KWのサスペンションは常に進化しています。
同じモデルでも、より優れた性能を追求する中で、仕様が予告なく変更されることがあります。たとえ予告があったとしても、ラインアップが非常に多いため、全てを把握するのは困難です。ただし、基本的に「推奨値」は変わらないものとお考えください。

ご存じの方も多いかと思いますが、KWの車両開発には「4ポスト/7ポストテストシステム」が使用されています。そこで何を確認しているかというと、「タイヤの接地性」と「車両の挙動」です。

サスペンションは外からは見えにくいパーツですが、その役割は非常に重要です。とりわけ、タイヤの接地をコントロールする役目は、車両性能の根幹とも言えます。
そして、KWではそれを客観的なデータに基づいて判断し、採用しているため、推奨値が適当に設定されていることは絶対にありません。

実際にKWのサスペンションを装着して、「思っていたより柔らかい」「少し硬い」と感じる場合があるかもしれません。しかし、その推奨値こそが、その車両にとって最も性能を発揮する減衰力であるとお考えください。

もちろんそれは、限界領域での性能を重視した値でもありますので、日常のドライブでは、ご自身の好みに合わせて調整していただいたほうが、ストレスなく楽しんでいただけると思います。調整可能な範囲であれば、自由に試していただくのがベストです。

セットアップの基本と推奨値の使い方

ただし、推奨値から大きく外れてセットアップすることは、おすすめしません。
たとえば、1WAYでは「硬い」「柔らかい」の2択に近いのですが、2WAY、3WAY、4WAYになると、どこをどう調整すれば良いのか分からなくなる方も多いはずです。

だからといって、感覚だけでバラバラに調整してしまうと、かえって迷路に入ってしまいます。
まずはご自身でいろいろと試してみて、迷ったら一度推奨値に戻す、というスタンスで調整していただければ、安心して楽しんでいただけると思います。

また、KWの減衰力調整は、車両の挙動そのものに大きく影響する重要な機能でもあります。

KWの減衰力調整機能の基礎

以下に、KWでの減衰力の影響について簡単にご説明します。

  • リバウンド ロースピード(伸び側)……追従性/乗り心地/ロール・ピッチング/コーナリング など
  • リバウンド ハイスピード(伸び側)……より速い追従性、タイヤの接地性能
  • バンプ ロースピード(縮み側) ……コーナリング/タイヤグリップ/トラクション/ロール・ピッチング など
  • バンプ ハイスピード(縮み側)……強いG、急な左右の切り返し、激しい凹凸の処理

減衰力で体感できる変化

リバウンドは、ロースピード・ハイスピードともに、乗り心地がマイルドになったり、路面追従性が高まることで安定感が向上する、といった効果を体感できます。

バンプでは、ロースピード時にグリップ感やステアリングのレスポンス、フロントの入りなどが改善されます。また、ハイスピード領域でも同様にグリップ感が増すだけでなく、「突っ張り感」や「横方向の剛性感」などが調整できるため、コーナリングのしやすさが変わってきます。さらには、ドリフトのようにスライドさせたい場合にも有効に働きます。

減衰力調整は“学びの道具”

KWの減衰力調整は非常に高性能です。調整機能の数によっても違いがありますが、一般的に1WAYより2WAY、2WAYより3WAY/4WAYのほうが細かい制御が可能になります。

これまでスプリングレートの変更で車の挙動を調整していた方にとっては、より細やかな調整が可能になる魅力的なアイテムだと感じていただけるはずです。

もちろん、スプリングの剛性を上げれば、ロールを抑えて速く走ることができますし、タイヤのグリップを最大限に引き出すセッティングも可能です。
ドライビングスキルの向上に合わせてスプリングレートを上げる場面も出てくるかもしれません。
ただし、上げすぎるとタイヤの摩耗が早く進むこともあるため、まずはこの「減衰力調整機能」を活用して、7割程度の挙動変化はここでカバーできるという点を意識して、KWの性能を楽しんでいただければと思います。

減衰力を調整しなくても“KWの性能”は体感できる

もちろん、減衰力の調整を行わなくても、推奨値の範囲で使用していただければ、そのシリーズの本来の性能を十分に体感していただけます。
そして、何より重要なのは、ダンパー内部のバルブ構造そのものの性能です。

もっと詳しく知りたい、さらに理解を深めたいという方は、ぜひKWを実際に使ってみて、ご自身でいろいろと試してみてください。その上で、何か迷うことや相談したいことがあれば、弊社スタッフまでお気軽にお問い合わせください。

日本国内にも、方向性をアドバイスできるスタッフがいますので、必ずヒントになる情報をご提供できるかと思います。